2016.03.06 Sunday 16:25

戸隠へ 3



さて、翌朝は見事にスッキリと晴れて、
旅館の若奥さんも「今日なら奥社まで行けますね」とおっしゃってました。
タクシーの手配をお願いすると、ご親切なことに奥社の入り口まで車を出して下さるとのこと。
車で10分ほど行くと大鳥居が見えてきました。
ここからは徒歩でむかいます。
若奥さんからは「絶対に無理はしないでください。
お天気が少しでも怪しくなったらすぐに引き返してください。」と念を押されました。




大鳥居をくぐると雪に覆われた山林のなかのまっすぐな道をひたすら歩きます。
その風景の美しさに感動し続けながら黙々と。
すれ違う人も後ろから来る人も誰もいません。
野鳥の鳴き声とサクサクと雪を踏む足音と
「なんてきれい」「なんて美しい」という私の独り言しか聞こえません。
日差しはあるけれどピンと凍りついた山の空気が、
歩き続ける自分をなんだか清らかにしてくれるような気がしました。




30分ほど歩くとようやく奥社の入り口の「随神門」という朱塗りの立派な門が見えました。
平坦とはいえ雪道をずっと歩くのはけっこうこたえます。
ハァハァ言いながら門の前にたどり着きました。
ここからは勾配のついた道をまた2キロほど歩かないと奥社へはたどり着けません。




門をくぐると樹齢400年の巨大な杉の並木道が奥社までずっと続きます。
そこは、言葉にならないぐらいの感動的な光景です。
その神聖さに呆然としてしまってしばらく動けなかったぐらいです。
吸い込む空気の冷たさが心も体も浄化してくれるようです。
こんな美しい光景に出会えるたことが本当にありがたくて、
進んでしまうのがもったいないような、
許されるならずっとここにいたいような気持ちを抑えつつ再び歩き始めました。

相変わらず人は誰もいません。
しんと静かななか、一人黙々と、小鳥の声を聞きながら歩き続けます。
ときどき上を見上げながら、この幻想的ななかに例えば精霊とか、
天狗とか、何か超常現象的な存在が枝の上にいたとしても驚かないとすら思いました。
道はだんだん勾配が強くなり、険しくなってきました。
あたり一面が雪で覆われているので、視覚的にはその急勾配は感じれれないのですが、
踏み出す足の角度からしてかなりの険しさです。
どなたかが「聖地を守る険しさ」と書かれていたことを思い出しました。




30分ほど歩くと左手に雪に埋まった鳥居と小さな神社が見えてきました。
「あ、もしかして九頭龍社(くずりゅうしゃ)?!」と思ったのですが、
あとで調べたら「飯綱社(いいづなしゃ)」という戸隠山の近くの飯綱山の神さまを祀る摂社で、
上杉謙信や武田信玄などの戦国武将が信仰した戦勝の神さまだそうです。

その時点では「九頭龍社」と思い込んでいた私は、お詣りをするために鳥居をくぐろうとしたのですが、
ここの勾配がかなりすごい急傾斜で、そのうえ雪が柔らかく、進むたびに足がズブズブと沈んでいきます。
バランスを保ちながら急傾斜を登るというのは、運動神経ゼロの身にはものすごく難しったです。




ゼーゼー言いながら「飯綱社」をなんとかお詣りして、
そこからまた少し歩くと「奥社」の屋根が見えてきました。
そして目の前にはさらにものすごい急斜面が立ちはだかります。
ここは今まで登ってきたなかでは一番の難所。まるで真っ白な壁のようです。
薄っすらと人が歩いた跡があるとはいえ、ここも雪が柔らかくかなり危険です。
慎重にゆっくりと一歩ずつ登ります。
途中何度かバランスを崩して「ああ、滑り落ちるかもしれない」と思う場面もありましたが、
幸運にも滑り落ちることなく登りきりました。
登りきったときは心からの安堵感と、
ようやくここまで来させて頂いたという感謝の気持ちでいっぱいになりました。

登ってから気がついたのですが、
うえの写真の左手にある建物は冬期閉鎖されている授与所窓口で、
その奥にひっそりと「九頭龍社」がありました。
雪から守る為、本殿のまわりは完全にベニヤで覆われてました。
4月半ばまでは「九頭龍社」も「奥社」も閉められるので、神さまは「中社」にお祀りするそうです。
でも閉じられているとはいえ、特別な雰囲気はしっかりと感じられます。
縁結びと水の恵みのご利益があるそうです。




そしてついに「奥社」です。
日本屈指のパワースポットで、開運と心願成就の神さまへのお詣りということで、
戸隠に来るまえは何をお祈りしようかとあれこれ思っていたのですが、
実際にこの場に立ってみるとそのあまりの清らかさと、
確かに感じるエネルギーのようなものに圧倒されます。
まずは無事に来させて頂いたことに感謝を。そしてささやかなお祈りを致しました。




奥社本殿のうしろには険しい戸隠山が広がります。
見上げた美しい青空とこの素晴らしい眺めを私は一生忘れないでしょう。
しばらくは感動で身動きできませんでした。
神々しいこの地に一人でいられたという身にあまる贅沢さと奇跡のような出来事に、
戸隠の神さまに本当に感謝するばかりです。




帰り道にようやく人とぽつりぽつりすれ違うようになりました。
写ってる方の大きさと比べるとこの杉の並木道のスケールの大きさがわかります。
あとで今回の旅のきっかけを作って下さった方から、ここは龍の通り道と言われていて、
龍の流れに乗るからか、行きよりも帰りのほうが楽ですよと教えて頂きました。
なるほど、納得です。帰りは確かに楽でした。

これで私の一生忘れられない戸隠のひとり旅は終わり、清らかな気持ちで東京へ戻りました。
でも日常生活が始まると、やっぱりグッとくるしょっぱいことや、悲しいこと、
切ないことも普通におこったりします。
いつもの私だったらイライラしたり、クヨクヨ落ち込んだり・・・なのですが、
あの奥社から見た風景を思い出すと、不思議と心穏やかでいられるように感じます。
それだけでも戸隠に行けて本当に良かったと思います。
自分にとってのあの奇跡は2度と起こらないと思うけど、また冬に行ってみたいな。




 

 
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